

▼生物学者のレイチェル・カーソンが執筆した『沈黙の春』は、今も環境問題などを考える際の道標(みちしるべ)の一つ。農薬など化学物質の無秩序な使用による生態系への深刻な影響を指摘し、規制導入など社会変容に寄与してきた。
▼119年前のきょう、米国で生まれた彼女は、環境汚染で鳥のさえずりが聞こえなくなった春を象徴的に表現し、利便性最優先が生む静かな破壊に警鐘を鳴らした。科学の否定ではなく、むしろ正しく使うためにその影響を考慮する大切さを説いた。
▼この視点は、気候変動など現代社会の問題にも通じる。開発競争が激化する人工知能(AI)もその一つ。必要な解答を瞬時に得られる便利さなどから急速に普及する一方、誤情報の作成やサイバー攻撃への悪用などが指摘されている。仮に世界中の人々が持つ技をAIが無断で分析・取得し自動化する時代がきたら、子どもたちの希望の声は聞こえてくるだろうか。
▼沈黙の春は最終章でこう述べている。私たちが長い間旅をしてきた道はすばらしい高速道路だが、行きつく先は破滅、と。著者の誕生日に、社会を真に豊かにする科学とは何かを改めて考える。