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防風林「農村の多角的機能は農家の暮らしから派生する【2017年4月4週号】」

 埼玉県秩父地方には、春の訪れとともに白やピンクの色鮮やかなシバザクラが咲き丘陵全体を覆う公園がある。春先のこの時期は多くの見物客が詰めかけ、駐車場から花園までの小道には、農家の庭先で野菜や加工品などが売られちょっとした露店街。
 ▼シバザクラは繁殖力が旺盛な地覆植物で雑草の抑制に効果があることから、最近は水田や畑の傾斜地や畦道〈あぜみち〉に植えられている風景をよく目にする。花色も多彩で混植することで景観植物として心を和ませてくれる。
 ▼中国地方のある水稲農家は、養蜂家と蜜源レンゲ契約で水田に赤い花を咲かせ癒やされたのを記憶する。「蜜源収入とチッ窒補給、土壌改良と一石数丁」と言う。畦道にはリュウノヒゲを植え、機械進入口や土の露出部に泥とモルタルを混ぜて固め、土留めや雑草を抑制する行動は損得勘定ではない、土地への愛着からだ。
 ▼山形の山深い町では、山と水田の際や屋敷塀と道の境界を仕切るように住民共同で花を咲かす。伝統的住宅と風景が溶け込んで、かつて連載した「快適農村」の取材で、人間の協働が創〈つく〉る景観の美しさに感動した。
 ▼農水省のある幹部が「農村の多面的機能」を否定する発言をしたという。環境保全を目的に野良仕事する農家はいない。代々暮らし子を育て、作物や家畜を生産する営みがあるから取り組める。その永続があって多面的機能につながる。美しい農村風景は、農家のそんな営みからの「おこぼれ」と思う。


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