今週のヘッドライン: 2025年01月 1週号
株式会社北山神水川(ほくざんしおいがわ)ファームは、佐賀市北部の富士町、北山西部地区の5集落が連携して設立された広域営農組織だ。草刈りやドローンによる防除、林業作業などを受託し、中山間地域の農地保全に努める。正社員2人を雇用し、自社で管理する農地5.5ヘクタールでは水稲・野菜を栽培。水稲では密苗や直播を導入し、省力・低コストの栽培を実践する。野菜は、新たに冬どりタマネギを取り入れるなど、農地活用を進めながら経営安定を図っている。
愛知県豊田市北部の敷島自治区では、「しきしまの家」を拠点に地域住民の支え合いや都市住民との交流活動に取り組み、中山間地の暮らしと農業を多面的に支え、農村に活気を生み出している。地域の高齢者などの困りごとを受け付け、解決できる住民につなぎ、有償で支援する仕組みを構築。本年度だけで100件以上の相談に対応している。また、米の生産者と消費者が長期の栽培契約を結ぶ「自給家族」をはじめ、体験やイベントで都市住民との交流を深めるなど関係人口の創出・拡大にも積極的だ。
新潟県十日町市の水沢地域では、若手米農家3人が株式会社のうランドを立ち上げ、水稲生産に加え、クリやサルナシなど観光果樹園を運営して収穫時期の1カ月間に2000人以上が訪れる。宮澤健太郎代表(47)は「体験や観光を通じて、農業のテーマパークのような、人が集う場にしていきたい」と話す。高齢化で管理できなくなっていた果樹園を、直売所や加工事業とともに継承し、事業の多角化や冬の収益確保に務め、地域農業をもり立てている。
政府は、合理的な費用を考慮した価格形成の仕組み確立へ、次期通常国会に関連法案を提出する。農林水産省が12月13日に自民党農林関係合同会議に示した検討方向では、売り手が生産・製造に係る費用などを明確化し、買い手は費用を考慮して価格交渉を行うことを「努力義務」として規定。農林水産大臣は、努力義務に対応した「行動規範」(判断基準)を示し、取り組みが不十分な場合は指導・勧告などを行う枠組みとする考えだ。資材価格の高騰・高止まりや円安などが農業経営を圧迫する中、持続的な食料の安定供給実現には、再生産可能な価格形成による農業所得の安定確保が欠かせない。消費者理解の下、実効性ある仕組みの整備が求められる。
全国のNOSAIの家畜診療所と獣医師は乳用牛・肉用牛などの診療や損害防止事業を通じ、畜産現場を支える。さらに、産業動物獣医療の知見を生かして、牧場の生産性・収益性の向上につなげる「生産獣医療」が注目され、各地のNOSAIの家畜診療所も取り組みを始めている。NOSAIの家畜診療所による生産者支援の取り組みをまとめた。
見合い結婚から恋愛結婚へと時代によって出会いや結婚の形は変化してきた。現在、婚姻率が低下する中でネット系婚活サービス(恋活・婚活サイト・アプリ)などを利用して結婚する人が増えている。出会いはお互いを知り、理解を深めるのが基本だが、農業後継者には家を継ぐ意識の強い人も多い。農業者に絞った婚活サイトの運営や、むらで結婚相談所を運営する取り組みを取材し、農業者の婚活事情を探った。
これからの農業の発展、地域経済活性化のためには、生産や販売の現場で役割を果たす女性の活躍がますます重要です。家業を継いだ人や転職、起業した人を取り上げ、それぞれの立場で地域農業を盛り上げようと励む女性を紹介します。
〈写真:ネギ「夏扇パワー」を作付けする秋田市の長谷川麻理子さん(43)。「人とのつながりを大事にしていきたい」と話す〉
「一富士二鷹三茄子」は、江戸時代から伝わる日本のことわざ。初夢に見ると縁起が良いとされているものを並べた言葉です。新年号ではこのことわざに出てくる「富士」「鷹」「茄子」にちなんで「リンゴの品種『ふじ』の栽培者」「白鷹町で研修生受け入れをする農業法人」「種子生産を手がける那須さん家族」を紹介します。
〈写真:白鷹町の合同会社紺野農園では、代表の紺野伊久雄さん(72歳、左から2人目)を中心に若い世代が活躍している〉
近年、農家の高齢化や後継者不足が課題となる一方で、農業に興味や関心を持ち新規就農する若き担い手がいます。自分の夢や目標に向かって挑戦する3人の今年の抱負を紹介します。
〈写真:「ストレスなくのびのびとした牛を育てていきたい」と話す角田市の渡邊広輝さん(27)〉
新春を迎え、本格的なハウスイチゴのシーズンが始まる。2024年の東京都中央卸売市場におけるイチゴ類の取扱金額は、10月末時点で300億円に達し、果実類の1位。近年では、特徴ある香りや甘みで付加価値の高いブランドイチゴを生産する農園のほか、家族や友人同士で新鮮な果実を摘み取って食べ比べができる観光農園が人気を後押しする。今号では、関東4都県のイチゴの観光農園と農家を取材し、取り扱う品種の特徴や栽培に懸ける思いなどについて聞いた。
〈写真:三鷹市にある「いちごランド以志井農園」園主の石井昭広さん(62)。キッチンカーはいちごランドのシンボルとなっている〉
県の独自品種や地域特有の名前が付いたブランド米は、近年ますます注目を集めています。栽培地の風土が育む食味が魅力の一つで、それぞれの個性が際立っています。地産地消の観点からも人気が高まり、多くの消費者に親しまれています。好みの味や食感を探しながら、地域ごとの特色を楽しめるのも魅力です。今回は群馬県、埼玉県、千葉県、山梨県のブランド米を生産する農家をご紹介します。栽培方法や安全性への配慮、生産に懸ける思いなどについて聞きました。
〈写真:たわわに実った稲を手に川場村の小林仁志さん(46)〉
九州・沖縄地区の若手農家が経営改善の取り組みや研究成果など農業への熱い思いを発表した令和6年度九州・沖縄地区青年農業者会議。農業の未来を担う若手農業者が、自らの経営課題と向き合い、どう乗り越えていくのか、おのおのが創意工夫を凝らした研究の内容を紹介する。
〈写真:「技術を応用し、他の品目でも収益安定につなげたい」と話す曽於市の岩永遼祐さん(26)〉
▼気持ちを新たに新年を迎えたい。ただ、昨今の世界や日本をめぐる情勢には先行き不透明感が漂い、すっきりしない。ウクライナや中東の紛争は長期化し、終息が見通せない状況だ。そんな中、自国第一を掲げるトランプ氏が米国大統領に返り咲く。一方、欧州連合(EU)をけん引するドイツやフランスで政治的な混乱が続き、国際的な発言力の低下も懸念されている。
▼貿易や経済をめぐる交渉、地球温暖化対策など、国際社会は多国間の連携を強化する方向で調整を図ってきた。しかし、トランプ氏は、就任前から各国への関税引き上げを公言。温暖化対策を促す国連気候変動枠組み条約から再度の離脱を強行する恐れもある。
▼特に温室効果ガス排出量世界2位の米国が離脱すると、積み上げてきた温暖化対策が大きく後退する懸念もある。「地球沸騰化」との発言で高い水準の地球温暖化対策の必要性を訴えた国連のグテーレス事務総長は何を思うだろう。
▼ドイツやフランスの政治的な混乱の背景には、移民増大や物価上昇、温暖化対策の負担拡大への不満があり、米国民によるトランプ氏の選択にも移民問題や格差拡大があるとされている。格差拡大や生活苦など不満の高まりは日本も同様で、衆院選を経て30年ぶりの少数与党となった。国の基本的な責務は国民の食や生活の安全を保障することだ。暴力的な対立や分断をあおるネット上の情報に惑わされることなく、政策的な課題には熟議で解決を見いだす政治の実践を望みたい。