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踏み越えた先に見える(2-4面)【2017年1月1週号】

 政府・与党は昨年末、農家所得向上に向けて生産資材価格の引き下げなど13項目の「農業競争力強化プログラムを策定し、「農林水産業・地域の活力創造プラン」に盛り込んだ。だが果たして、「強い農業」は誰のためなのだろうか? 小規模や条件不利地で収益向上が難しい営農も、信じる方向に舵〈かじ〉を切り、一歩また一歩ずつ前に進めば、いずれ一筋の光明が見いだせるはずだ。「踏み込んだ先に見える」。小さくても確かな一歩には、眼下に見える眺望は異なるはず。営農やむらづくりに、災害復興に取り組む事例から、多様な経営が地域農業を支えることを示したい。

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荒廃農地に人を呼び込む 笑顔集う地域 ―― 神奈川県大磯町・NPO法人西湘をあそぶ会
〈写真:大磯農園の「大磯こたつみかん部」に参加したメンバー。地域内外の住民や農家が交流する。〉
170112-01.jpg 地域活性化を目指す神奈川県大磯町のNPO法人西湘をあそぶ会は、「大磯農園」と名付けたプロジェクトで、小規模農地が点在する丘陵地に人を呼び込み荒廃農地の再生に取り組む。農や自然との関わりを求める都市住民などを年に150人ほど集め、土日の作業で水稲やミカン、大豆などを計55アールで栽培。手作業を中心に草刈りなども協力して行い、交流や苦労も含めた農業の魅力を伝える。酒造会社と連携し、収穫した酒米から造る日本酒をみんなで味わうなど、農作業から食べるまでの一貫した取り組みを進める。生産性の高さや利潤追求ではなく、多様な人々が関わり合い課題解決を楽しみへつなげながら、農村の景色と暮らしを残そうと活動を続ける。

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自給粗飼料で「低燃費酪農」 自信の牧場経営 ―― 北海道弟子屈町・芳賀ひとみさん
〈写真:「家族でやっていける今のやり方が性格にも合っている」とお気に入りの牛とじゃれあうひとみさん〉

170112-02.jpg 北海道弟子屈町美留和で芳賀牧場を営む芳賀ひとみさん(26)は、自給粗飼料を主体にする給与設計で、生産コストを低減し、1頭当たりの農業所得を確保する「低燃費酪農」を実践している。年間の平均搾乳量は約6500キロと少ないが、集約放牧や粗飼料の品質向上で牛の健康を保ちながらゆとりを持って飼育できる酪農経営に舵を切る。父親の正美さん(65)から経営移譲を受けて2年目。一人前の経営主として胸を張れるように、日々の仕事に励む。

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被災した直売所を再興 感謝を胸に ―― 和歌山県新宮市・農産物直売所かあちゃんの店
〈写真:店舗運営スタッフの、後列左から大石幸子さん、南本千鶴さん。前列左から竹田愛子さん、湯川千代子さん〉

170112-03.jpg 「店舗全壊から約5年半。こうして営業できていることが夢のようであり、もっと盛り上げないと」と話す、「かあちゃんの店(和歌山県新宮市熊野川町)」の運営母体である、熊野川産品加工組合組合長の竹田愛子さん(76)。新店舗をオープンして間もなく2周年を迎え、草餅など自家製加工品の販売や農産物などの受託販売で地域住民や観光客に重宝がられている。旧店舗は「平成23年紀伊半島大水害」で被災。営業再開を断念する向きもあったが、若手組合員から再開を希望する声が上がり、自治体を引き込んで仮設店舗での販売を2012年6月にスタートした。15年3月には現在の新店舗での営業を開始。竹田さんは「これからも感謝の気持ちを忘れず、愛され続けるお店でありたい」と話す。

(2-4面)