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田んぼに息づく生きものたち

シリーズ(第1話)

多様な生物が生息する驚きや楽しさを感じてください

tyousa2.JPG  水を張った田んぼや水路の中を覗いてみたときがありますか? 「泥水だらけ?」「何もいない?」......目を良くこらし根気よく観察してみてください。元気な田んぼには、オタマジャクや小魚、タニシ、水田雑草(コナギやオモダカ)などが息づいているはずです。  私は埼玉県久喜市に住み、東京のNOSAI全国に勤務するサラリーマンです。小学校のボランティアを通じて田圃の生き物たちと向き合ううちに、「水田環境鑑定士」という資格を取得するまでのめり込んでしまいました。このコーナーを通じて多くの方に田んぼの多様な生き物について知っていただければ幸いです。第一回目は、私が田んぼの生き物調査を始めたきっかけと、環境についてお話します。  JAS有機栽培、特別栽培、環境保全栽培、慣行農法など、さまざまな田圃で生き物調査をしてきました。「農薬を使用していると生き物がいなくなる」と思っている方もいると思いますが、そうではありません。使用する薬剤の特性を勉強して種類や散布回数を抑えたりすれば、田圃の環境は大きく変わり、田圃の生き物もたくさん生息するのです。その一例を紹介します。

除草剤、殺虫剤を散布した田圃に生き物が

kabutoebi1.jpg 私は、趣味で田圃や水路の生き物を自宅で飼育しています。いつも行く田圃を眺めていると白い粒が沈んでいました。仕事柄、除草剤の3キロ粒剤と直ぐに分かりました。除草剤を散布した後の水田にも関わらず、いろんな生き物が活発に活動しています。「アレ、農薬を使用すると生き物は死ぬはず」と、自分のどこかで決めつけていた私です。「そうか、農薬を使用しても生き物は死滅するわけではないのだ」と、初めて気がついた瞬間でした。

薬剤のもつ特性でより環境影響は異なる

ikimono1.jpg ある農家にこの話をしましたが信じてくれません。「じゃ、君の水田で生き物調査をやってみよう」ということになりました。その水田は、河川からポンプで水をくみ上げる方式の水田。すでに殺虫殺菌剤(箱施用剤)を使用した苗を植え、除草剤散布した後の調査です。
 観てビックリ! なんと水面に珍しい「イチョウウキゴケ」、水面下には「ジャグモ」という藻が生えています。しかもたくさんのミジンコやオタマジャクシ、さらにカブトエビを発見。毎年その田んぼで米作りする農家も、「長年やってきたが、こんなに自分の水田に生き物がいるとは知らなかった」といい、「農薬を使用しても生き物はいるのだ」と、納得してくれました。
 同じ地域の少し離れた水田を観ると、ほとんど生き物がいません。何でこんなに違うのでしょう? 除草剤は一緒でしたが、苗に散布する箱施用剤の種類が違うことが判明しました。生きものがいない田んぼで使われていた薬剤の「安全使用の注意事項」には「水産動物に強い影響を及ぼす」とあり、特に「エビ類(甲殻類)」に注意と記載されていました。一方の薬剤は、水産動物に比較的に影響がないことが分かったのです。薬剤は害虫(虫)を駆除するものですが、薬剤が持つ特性によっては影響が相当違うのです。

食物連鎖を崩さないように配慮することが大切

 田んぼは、水が入ることによって土壌中にいた原生動物が増殖し始め、それを餌とするミジンコなどがふ化して大量発生します。次にミジンコを餌とするカエルのオタマジャクシ、ドジョウ、ヤゴ、ホウネンエビなどが発生します。そして、これらを餌とするヘビや鳥(サギ)がやってくるのです。もし、ミジンコがいなくなったら...どうなるでしょう? ミジンコがいなくなればそれを捕食している上記の生き物が減少また消滅してしまうのです。田圃の食物連鎖の崩壊がもたらしたのが、「生き物の少ない田圃」を作ってしまったのです。
 農薬は、稲にとって有害な病害虫や菌類を駆除することで、生産性を高めるために開発されたものです。開発に当たっては、研究機関で何年もかけて研究・実証を繰り返して農薬登録されています。ですから、使用説明書に定められた適切な使用により、食の安全性確保や環境に大きな負荷を与えないことは確かなものと言っていいでしょう。要するに、生産する農家の考え方や姿勢が問われることになると思います。

農業生産と自然環境を両立、農家たちの思いから

suiden2.JPG 薬剤を全く使わず一定の収量を確保する有機栽培や特別栽培米が出来る農家もいれば、農薬の助けを借りながら水稲栽培を実施する人もいます。しかし、前者を行うには長年の経験を卓越した栽培技術を要するため難しいのは周知のとおりです。田んぼを良く見回って稲の生育を観察したり、病害虫発生予察情報をもとにした防除に徹することで、今までより使用する剤数や散布回数を減少させることはそう難しいことではありません。
 そんな取り組みの成果として、てきめんに現れるのが「田んぼの生きもの調査」と言えます。昨年いなかったミジンコが泳ぐ、カエルの鳴き声がよみがえった。そんな水田環境を子供たちに残してあげたいと思いませんか? 農業生産と自然環境、そして食料生産のための農薬のことなどを併せて話せば、消費者や子供たちにも理解してくれるはずです。
 次回からは、水田にどんな生きものがいるのか、などを解説します。

田口 昌孝(49歳) 水田環境鑑定士

昭和34年、東京生まれ。現在、埼玉県久喜市在住。全国農業共済協会普及広報部(農業 共済新聞)広告課長として在籍。

子供の小学校の水槽管理がきっかけで7年前から学校支援ボランティアで活躍。小学校の 水槽管理やビオトープ製作・管理を行う一方、水槽で飼育している魚の話やビオトープの大 切さを講師として授業を受け持つ。また、田んぼでの生き物体験ツアー毎年実施。水田環境鑑定士としてはJAみやぎ登米や宮城県七ヶ宿町の水田を鑑定。また、イベント 等で水生生物のガイドとして活躍。
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