▼一般国民にとってなじみの薄い「病院の言葉」を分かりやすくしようとの提案を、国立国語研究所が先ごろまとめた。患者や家族に向けて使う医療者の言葉のうち、十分に意味が伝わっていない例に、がんと混同しやすい「腫瘍〈しゅよう〉」などを挙げた。
▼インフォームドコンセント(納得診療、説明と同意)の考え方と言葉は定着してきたが、説明を受ける側は言葉に分かりにくさを感じていると指摘した。「重篤」「合併症」など57語を選んで、誤解の内容や端的な言い換え表現を示し、詳細な説明を加えている。
▼農政も、対象となる農業者や国民に向け、現在の課題や政策内容を分かりやすく伝えることが重要だ。農業の担い手確保や食料自給率向上など課題は山積しているものの、最近の農政改革をめぐる議論は、今年行われる総選挙も視野にあるためか、かなり不透明。
▼問題の一つは、政府と与党の方向が合致していないことだ。石破農相は、米の生産調整を含め農政を抜本的に見直す考えを打ち出し、政府の関係閣僚会合の場で検討を進めている。自民党の基本政策委員会は、現行の生産調整の枠組みを基本に、生産調整実施者のメリットの拡充など支援強化を重点に掲げる。これに対し、民主党は販売額とコストの差額を補てんする「戸別所得補償」を提起し、今国会に法案を提出した。
▼政府・与党と野党の間で、政策議論が活発に行われることに異論はない。しかし、経済危機を受け、農業による雇用確保や農山漁村振興策など国内対策の充実が求められる中、現状では予算の獲得や積み上げを求める声は大きいものの、それぞれの政策が目指す農業・農村の将来像が十分に見えてこない。
▼総選挙を控えているからこそ、各党は将来展望を見据えた政策を提起し、国民に提示する必要がある。その際には、分かりやすい言葉を使い、理解が深まるよう詳しく説明することを忘れないで行ってほしい。